米田透 俳句集(2018年)

響焔2018年1月号(No.595)

青焔集

冬支度    (横浜)米田 透

やっと解けた数独パズル秋の空
オクトーバーフェスト笑顔と音楽と
新たなる道の発見秋高し
秋うらら英語をしゃべるスピーカー
待望の貴重な晴れ間冬支度


響焔2018年2月号(No.596)

青焔集

はつ冬    (横浜)米田 透

ピーナツの薄皮食べて冬隣
はつ冬や米寿の教授なお若く
冬の道地産の野菜少し買う
うす紅の甲州ヌーボーなかなかに
足温器あれば書斎に籠りおり


響焔2018年3月号(No.597)

青焔集

実千両    (横浜)米田 透

冬三日月潔癖症に囲まれて (栗原節子抄出)
北陸の天地の恵みかぶら鮨
暖房の入ったお寺巡りおり
四子局必勝作戦大寒波
朝粥と白湯と梅干し実千両
(栗原節子抄出)


響焔2018年4月号(No.598)

青焔集

冬の旅    (横浜)米田 透

省力化進む空港冬の月
半袖の国に到着十二月
アラスカの鮭のムニエル冬うらら
十二月海水浴のできる島
冬の旅天婦羅蕎麦で締めくくる


響焔2018年5月号(No.599)

青焔集

雪の夜    (横浜)米田 透

忘れ物したまま歩き雪の夜
(森村文子、紀のア茜抄出)
春立ちぬ家族のためにできること
理系男子が蛇口を修理浅き春
六十年前の思い出ヒヤシンス
赤色の春の花束妻の手へ
(和田浩一抄出)


響焔2018年6月号(No.600)

青焔集

花の雨    (横浜)米田 透

麻婆豆腐辛すぎのよう春の宵
自治会の集まりに出て春の月
(西博子抄出)
どちらでもよい囲碁の勝ち負け柳の芽
雨の中開花の桜川堤
貿易戦争始まる気配花の雨

生き物に寄せて 金魚から微生物へ    米田 透

 自分の家にペットがいるようになったのは、結婚して子供が二人生まれ、
下の子(女)が動物好きに育ったからである。娘が幼児の頃は横浜の野毛山
動物園に頻繁に連れて行った。娘は何回も行く内にどの動物がどこにいる
かをすっかり頭に入れていた。バクの前を通るときはおしっこをかけられる
ので気をつけていた。娘のお気に入りはレッサーパンダの家族だった。
 娘はまず金魚を飼いたいと言った。金魚に飽きたら次はセキセイインコ
になった。その次は猫。家のまわりにいた雌の野良猫に餌を与えていたら、
やがて四匹の子猫を出産。なんとこの時出産には娘が立ち会った。二匹は
他家にもらってもらい、二匹を家で育てることになった。魚類、鳥類ときて、
我が家のペットはついに哺乳類になった。猫は食事と排せつの世話、動物病院
通い(避妊手術、病気、怪我)など、手間とお金のかかるペットだが、猫の死は、
子供達に生き物はやがて死ぬということを教えてくれた。
 娘は当初獣医になるのだと言っていたが、進路変更し、大学からは電子顕微鏡で
微生物を研究する道に入った。大学院進学に際しては、米国への留学を企て、
授業料免除で生活費ももらえる博士課程を見つけ出し、猫を私達に任せてセント
ルイスへ飛び立っていった。やがて、犬を飼っていたアメリカ人医師と恋仲に
なった。博士号を取得した後は大学に職を得た。そして結婚し永住権を取得した。
ペットの犬は天命を迎えたが、娘は女児を出産。この一月に二歳になった。この
孫娘もどうやら動物好きらしい。  


響焔2018年7月号(No.601)

青焔集

花の昼    (横浜)米田 透

折り畳みの椅子持ち寄って花の昼
(和田浩一抄出)
歳とって時間は自由若葉寒
分葱入りの卵汁など日が暮れて
赤信号と一羽の鴉夏近し
朝の歩道はなびらばかり続きいて


響焔2018年8月号(No.602)

青焔集

豆飯    (横浜)米田 透

揚げたての豚カツ旨し昭和の日
若者に交じってビール風青し
五月半ばワインで祝う婚記念
豆飯に人喜ばす力あり
(紀のア茜抄出)
変わったようで変わらぬ画風薄暑光


響焔2018年9月号(No.603)

青焔集

青葉木菟    (横浜)米田 透

梅雨晴間太い枝にはチェインソー
暑気払い根津界隈を七八人
婆さん数人爺さん一人七変化
夏至の日や地球公転揺るぎなく
犯人は人工知能青葉木菟
(西博子抄出)


響焔2018年10月号(No.604)

青焔集

Eメール    (横浜)米田 透

一日を無駄なく使い夏の夕
(鈴カノン抄出)
天災の多い年なり盂蘭盆会
銀行三つ肉屋を一つ暑い朝
(西博子抄出)
炎昼やハンバーガーとEメール
沖縄の灯籠流しゆったりと


響焔2018年11月号(No.605)

青焔集

抜歯    (横浜)米田 透

駆け込んで結果は抜歯七月尽
一日に二つの予定夏旺ん
気が利かぬ人も受け入れアマリリス
うな重で祝う息子の誕生日
(和田浩一抄出)
炎天を歩いた後の松並木
(伊達甲女抄出)


響焔2018年12月号(No.606)

青焔集

秋の声    (横浜)米田 透

ひさびさの眼科検診鶏頭花
横浜残暑インドネシアの豆を買い
どんぶりに焼茄子バター乗せて食う
突然の受胎のしらせ秋の声
パスポート更新に行き秋の雨



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