米田透 俳句集(2011年)
響焔2011年1月号(No.511)
白焔集
秋の海 (横浜)米田 透
駅ビルのホテルに一泊月見月
そのままの秋刀魚一本長い皿
問診票精密になり柳散る
秋の海船の向こうに摩天楼
そぞろ寒小物を入れる籠を買い
響焔2011年2月号(No.512)
白焔集
夕紅葉 (横浜)米田 透
めまぐるしい今年の気候風冴ゆる
よみがえる昔の記憶ポトフ食う
(高野力一抄出)
青年の弁論を聴き文化の日
道に迷い頼れるものは冬の月
同級生また一人逝き夕紅葉
響焔2011年3月号(No.513)
白焔集
なれど出勤 (横浜)米田 透
冬晴れや電動鋸活躍し
(高野力一抄出)
持ち寄ったワインを味見聖樹かな
カジキマグロのムニエルが出て忘年会
野辺送り二重にかかる冬の虹
天皇誕生日なれど出勤す
響焔2011年4月号(No.514)
白焔集
ヒートテック (横浜)米田 透
一月の五キロマラソン中学生
道案内ヒートテックで武装して
一月やお好み焼きを試作して
高齢で見事な逝去寒の月
大寒や想定外のこと多く
響焔2011年5月号(No.515)
白焔集
春一番 (横浜)米田 透
豪雪の石川県から妻戻る
節分の鬼は自分の心なり
(松塚大地抄出)
早朝の道路を覆う薄氷
人と車違う平面春動
春一番間食断ちを誓いけり
響焔2011年6月号(No.516)
白焔集
大地震 (横浜)米田 透
雛祭我が家の姫は外国に
大地震津波停電寒き春
出勤は弁当持ちで彼岸前
薄味の春の筍晩御飯
放射能汚染のニュース彼岸過ぎ
響焔2011年7月号(No.517)
白焔集
バナナミルク (横浜)米田 透
牛乳と納豆確保彼岸かな
夕食の一環としてさくら餅
(山崎聰抄出)
ふりかけの試作などして春土曜
春の宵バナナミルクを作り飲む
仕事終え筍御飯日本人
響焔2011年8月号(No.518)
新珠集
初老 米田透
一夜明け帰宅難民なる新語
停電で早い退勤彼岸前
定食のメニュー絞られ春の昼
万愚節ふざける者は誰も無く
菜の花のおひたしが出る夕餉かな
春の宵初めて食べるニラ饅頭
天災の年ではあれど桜咲く
シェフは妻アサリ酒蒸初鰹
無防備に春の海辺の水族館
丸刈りの庭木躑躅が咲き始め
筍の天ぷら今日のニュースなど
春の宵からり秋刀魚の竜田揚げ
チューリップ遊び盛りの初老かな
白焔集
猫の敵 (横浜)米田 透
昭和の日アメリカ人から電話あり
禅寺の山門くぐり春の暮
新しい笛吹きケトル夏きざす
(松塚大地抄出)
山躑躅ルビー婚式ささやかに
夏草をすっかり除き猫の敵
響焔2011年9月号(No.519)
白焔集
画廊 (横浜)米田 透
梅雨の空銀座のはずれの一画廊
夏の宵新旧二軒の古本屋
蛍光灯の不具合直し梅雨の月
広尾にも歩行者天国夏日曜
家系図のその後の話梅雨晴れ間
響焔2011年10月号(No.520)
白焔集
梅雨明ける (横浜)米田 透
気の乗らぬ土曜出勤蝉の声
年下の男の葬儀暑き夏
(亀谷千鶴子抄出)
東からまぶしい光梅雨明ける
(関花子抄出)
文庫本一冊買って夏の旅
レンタルのビーチパラソル伊豆半島
響焔2011年11月号(No.521)
白焔集
渋谷探索 (横浜)米田 透
忘れ物届く国なり夏の雲
(関花子抄出)
四十年ぶり渋谷探索暑い秋
昨年の器械取り出しかき氷
着実な眼鏡の進歩秋はじめ
秋の朝病の癒えた感じして
響焔2011年12月号(No.522)
白焔集
六十五歳 (横浜)米田 透
有り難く今年も食べる加賀の梨
細かい字見える快感秋めきて
ウォーキングコースを模索秋日和
秋朝焼け六十五歳へのメッセージ
台風接近人間ドック受け帰る