米田透 俳句集(2005年)

響焔2005年1月号(No.439)

白焔集

資源回収    (横浜)米田 透

土曜日の資源回収秋の空
どんよりと九月の日曜よく眠り
体育の日観音菩薩見て祈る
わけもなく本屋のはしご秋の雨
電子ブック数冊買って虫の声

白灯集

(横浜)米田 透

紅白の大福一対月見かな
人間ドックゆっくりと出てサングラス
手話付きの朝礼の後鬼やんま
秋深し電子ブックを少し読む
大雨の後の半月凛として


響焔2005年2月号(No.440)

白焔集

初紅葉    (横浜)米田 透

初紅葉太極拳と合唱と
冬隣ヘリコプターの両陛下
早起きの後の充足冬紅葉
出勤に自転車使いピラカンサ
電話きてボジョレヌーボー解禁日

白灯集

(横浜)米田 透

上海の若い人達蟹の店
暮の秋缶の紅茶を選び買う
冬の三日月真上にありて猫跳びぬ
初冬の精舎落慶竜の踊り


響焔2005年3月号(No.441)

白焔集

冬林檎    (横浜)米田 透

速くなる時間の経過日記買う
(長沼直子抄出)
精悍な顔付き揃い冬林檎 (山崎聰抄出)
握力と筋持続力餅をつく
垂直に本積み上げて師走かな
妻と子の北陸旅行冬晴るる

白灯集

(横浜)米田 透

中国から女性来訪冬紅葉
ガラス拭き家中済ませ小春空
予約した切符を買って冬北斗
冬の坂ゆっくり上り五十八


響焔2005年4月号(No.442)

白焔集

家族    (横浜)米田 透

妻と子の着物の写真霙ふる
初詣むすめの足の速くなり
焼肉と冷麺食って三日かな葉
木枯らしやふと思いつきケーキ買う
牡蠣鍋や家族の会話猫も聞き

白灯集

(横浜)米田 透

パソコンで韓国ドラマ聖夜かな
冬の横浜ブランド店のフランスパン
血圧と体重冬の診療所
体験を聞いてもらいて寒の朝


響焔2005年5月号(No.443)

白焔集

春の雪    (横浜)米田 透

冬ぬくし親子で食べる親子丼
立春や見晴らしの良い外科病棟
春の雲明るい顔の執刀医
冴返る明るい話題探し出し
家々の屋根絵画のごとく春の雪

白灯集

(横浜)米田 透

中華風リゾットを噛み春の宵
福寿草妻の顔見て出勤す
チューリップ術後の妻の誕生日
住民票簡単に取れ春の鳥


響焔2005年6月号(No.444)

白焔集

暗号    (横浜)米田 透

針のある温湿度計二月尽
それぞれのささやかな夢蜆汁
(柴田たか子抄出)
我がこころ仏のこころ梅の花
すみやかに届いた洋書春の夜
暗号が次々解かれ彼岸かな

白灯集

(横浜)米田 透

クラス会終わり東京春みぞれ
根性の無い関東の春の雪
蕗の薹いちにちひたすらねむたくて
春の宵敵も味方も美しく
デパートにものあふれおり彼岸前


響焔2005年7月号(No.445)

白焔集

暮遅し    (横浜)米田 透

手作りの胡麻豆腐など春の宵
携帯にメール着信暮遅し
ダ・ヴィンチの秘密を追って春の宵
対立も暴力もなく八重桜
蕗の煮物そういうものを作る妻
(柴田たか子抄出)

白灯集

(横浜)米田 透

乗り換えていつものところ春の空
こじんまりした回転寿司屋春の月
花の冷え書斎の整理(に)取り掛かる
かろうじて自転車通勤花の冷え
ソーセージ焼く役春の水曜日


響焔2005年8月号(No.446)

白焔集

夏めく    (横浜)米田 透

十連休始まりにけり鯉幟
葉桜や水の公園遊歩道
薔薇の花ワインとケーキ婚記念
妻も観る韓国ドラマ柿若葉
夏めくやすっきり痩せた友に会い

白灯集

(横浜)米田 透

松山から妻帰りけりチューリップ
あっけなく終わる連休針槐
韓国語まだ難しくユッカ蘭
真紅の薔薇十三日の金曜日
五月来て三十四回婚記念


白灯集

(横浜)米田 透

乗り換えていつものところ春の空
こじんまりした回転寿司屋春の月
花の冷え書斎の整理(に)取り掛かる
かろうじて自転車通勤花の冷え
ソーセージ焼く役春の水曜日


響焔2005年9月号(No.447)

白焔集

八仙花    (横浜)米田 透

目の下に築地の市場薄暑かな
血圧を女医に測られ大手鞠
汐留の四十六階夏きざす
十号の絵を手渡して梅雨の空
アルバムを整理する母八仙花

白灯集

(横浜)米田 透

杜若どこにも行かぬ日曜日
子の個展無事に終わりて手毬花
梅雨時は雨を楽しみ通勤路
予定表ひとつにまとめ罌粟坊主


響焔2005年10月号(No.448)

白焔集

カプチーノ    (横浜)米田 透

紫陽花は雨を喜び受け入れて
クールビズの講師背広の聴講者
海を見て山に登って百合の花
日焼けした葉山の乙女カプチーノ
海の日に合わせたごとく梅雨明ける

白灯集

(横浜)米田 透

梅雨冷えの日曜眠り南瓜食う
カトールズジュイエ浴衣の女達
焼き茄子儲けたような三連休
七月の寺へと向かう開祖の忌>


響焔2005年11月号(No.449)

白焔集

光ファイバー    (横浜)米田 透

夏の広尾景色の中に外国人
口細のコーヒーケトル法師蝉
ハイビスカス地球儀回し島探す
夏休みは留守番の役猫二匹
秋の空光ファイバー水平に

白灯集

(横浜)米田 透

せちがらき世に生き残る盆踊り
震度五の地震胡瓜も揺れており
人類地球皆いとおしく百合の花
子が一人米国に飛び鳳仙花


響焔2005年12月号(No.450)

白焔集

秋刀魚  (横浜)米田 透

骨一本残し秋刀魚を食い終わる
(金子一与抄出)
カツ丼に漬物少し虫の声
先輩と女と男秋の宵
夜半の秋男ばかりが集まって
寺に来る人々の列秋暑し

白灯集

(横浜)米田 透


月上り研修生の慰労会
皆でする職場の掃除秋涼し
救助袋を下る物体秋の空
和菓子売り場敬老の日の旗が立ち



Haiku Indexへ戻る


ご意見をお聞かせ下さい