米田透 俳句集(2002年)
響焔2002年1月号(No.403)
白焔集
中国初出張
(横浜)米田 透
秋うらら上海語で言うありがとう
秋寒の旧満州の一夜かな (金子一与抄出)
霧深し長城行きのロープウェイ
初紅葉高原ホテル大浴場
これからの方向が見え紅葉山
白灯集
(横浜)米田 透
共に住む子の誕生日秋桜
慣れてきた新たな仕事十六夜
月見団子土産に定時退勤す
空爆のニュース秋雨降り続き
戻らない生活リズム秋の蝶
響焔2002年2月号(No.404)
白焔集
猫の舌 (横浜)米田 透
風に乗りマーチングバンド今朝の冬
ボジョレヌーボー単身赴任解消す
イカ墨のスパゲティしし座流星群
猫の舌ざらり初冬のコンチェルト
中国語文法の本冬の月
白灯集
(横浜)米田 透
晩秋の雨ラジオから中国語
木枯らし一号携帯電話にメモ入れる
髪染めてみるのも良いか冬の雲
首都圏を出て湘南へ冬ぬくし
潔く寒気の中へ出勤す
響焔2002年3月号(No.405)
白焔集
忘年会 (横浜)米田 透
タクシーを下りて日本の冬の月
立食とダンシングギャル忘年会
電磁波でもの煮る時代鮭の鍋
赤ワイン家族に注いで聖夜かな
冬満月三崎直売マグロ食う
白灯集
(横浜)米田 透
英語試験終わり鍋焼きうどん熱し
薬膳カレー食べてから冬の寺
超音波歯ブラシ妻の十二月
義士討入日ぬくぬくと映画観て
数え日の残業これもしあわせか
響焔2002年4月号(No.406)
白焔集
寒の雨 (横浜)米田 透
ツァイチエンと客見送って冬の雨
ハリーポッター四巻揃い寒の雨
看病と在宅勤務寒の午後
うどん屋の肉じゃが目刺雪催
寒満月ハイテクノロジー乗車券
白灯集
(横浜)米田 透
ガラス拭く冬日の中に猫もいて
インターネット高速化冬至前
花粉症防衛マスク猫二匹
成人の日ごろごろごろと長寿猫
浦島太郎故郷に帰り花粉症
響焔2002年5月号(No.407)
白焔集
節分の豆 (横浜)米田 透
香ばしい節分の豆家族四人
これからの進むべき道梅の花
蕗の薹のてんぷら妻がよく笑い
花束とボルドーワイン妻の春
チューリップ白ひとつ妻里帰り
白灯集
(横浜)米田 透
空腹時血液検査寒明ける
十分間テレビ体操浅き春
舗道早春肩十分に動かして
禅寺の十三重塔梅の花
春の宵パソコン画面に囲碁の棋譜
響焔2002年6月号(No.408)
白焔集
香港 (横浜)米田
透
ふるさとの春をみやげに妻戻る
紹興酒熱く上海暮れてゆく (柴田たか子抄出)
いつもより早い出勤白木蓮
極上のシャンパン春の横浜港
春の夜香港島へ向くフェリー
白灯集
(横浜)米田 透
刑事ものテレビ観ている風邪男
二日目の病欠杉花粉飛んでいる
原書読むスピードおそく木の芽風
初めての香港赤い夜香蘭
突然の桜満開通勤路
響焔2002年7月号(No.409)
白焔集
四月馬鹿
(横浜)米田 透
ミートソースと納豆御飯四月馬鹿
手話付きの全体朝礼四月来る
定年が近づき春の同期会
筍飯買ったばかりの電子辞書
妻と子と野菜の煮物朧月
白灯集
(横浜)米田 透
桃の花女性社員の話聴く
五十歳過ぎてのハングル紫木蓮
どっぷりと世俗につかり降誕会
肩に注射晩春の強い風
あしたから黄金週間茄子カレー
響焔2002年8月号(No.410)
白焔集
憲法記念日
(横浜)米田 透
洋風の肉じゃが作り労働祭
憲法記念日手作りのハンバーグ
五月四日サスペンス劇観ておりぬ
横浜の喜多方ラーメン子供の日
茹で立ての蚕豆巨人また勝って
白灯集
(横浜)米田 透
初夏の雨働き蜂に戻りけり
浦島草結婚三十一周年
蛍袋居間の床張る老大工
夏料理退職あとのプラン聴き
日本で会うフランスの友五月晴
響焔2002年9月号(No.411)
白焔集
アボカドのサラダ
(横浜)米田 透
葺き替えたばかりの屋根に驟雨来る
ときどきは企業戦士に夏旺ん
アボカドのサラダ六月仕事人
夏めきてテレビ体操十分間
商談と広東料理夏至間近
白灯集
(横浜)米田 透
アナログの音楽ジャンヌダルク祭
糠味噌に茄子二つ入れ明日を待つ
留学の準備をする子五月雲
夏服を買い広州へ発つ準備
広州の四川料理屋盛夏かな
響焔2002年10月号(No.412)
白焔集
アメリカ人 (横浜)米田 透
梅雨明ける新入社員はアメリカ人
台風接近足元に猫二匹
マウイから子のメッセージ遠花火
熱帯夜「千と千尋の神隠し」
板の間に猫と並んで熱帯夜
白灯集
(横浜)米田 透
ポトフなど家族に作り巴里祭
遠くなるパリ祭五十半ば過ぎ
アメリカ人にとんかつ食わせ熱帯夜
短夜のハリーポッターDVD
クーラーの部屋にこもりて日曜日
響焔2002年11月号(No.413)
白焔集
加賀の梨 (横浜)米田 透
炎昼の横浜運河ある決意
スペインの宮廷映画冷そうめん
日本人のはらわたに沁み茗荷汁
秋めくや子供に戻りオムライス
八分の一に切られて加賀の梨 (北島洋子抄出)
白灯集
(横浜)米田 透
異国から戻り日本の夏休み
冷房効き各地の土産配られる
秋の風邪ベータカロチン揚げられて
ピザ二枚家族三人八月尽
響焔2002年12月号(No.414)
白焔集
ビーフステーキ (横浜)米田 透
ウェルダンのビーフステーキ秋暑し
五時過ぎて秋刀魚焼くとの電話来る
ぼちぼちと書斎の整理秋涼し
待宵やいつもと違う帰り道 (高野力一抄出)
帰省子の土産の渋いアロハシャツ
白灯集
(横浜)米田 透
カルピスを入れて自家製かき氷
秋めくや上野の森の大きな樹
寿司の皿積み上げ秋の木曜日
虫の合唱小学校へ向かう道
手のかかるむすめの帰省秋深む