米田規子の俳句 特別作品集 2001年〜


第28回(平成13年度)響焔賞 佳作

百日紅の空

ジーパンと白いTシャツ夏が好き
追われいて夾竹桃の風の中
球体の市民シアター揚羽蝶
アフリカ展の仮面いろいろ強冷房
ときには孤独青葡萄の下通る
熱風三日決心のようなもの
ミートソースとろとろ煮込み終戦日
おのずから祈り百日紅の空
うれしさは万緑へギア切り替える
子の洩らす優しいことば青田道
きらきらと水辺の時間夏柳
家という小船銀河の果てしなく
夏深しコーヒー館の小さき窓
無花果のタルト想い出パリの街
「G線上のアリア」まっすぐに秋

火炎集


響焔2001年2月号掲載

ふるさとやちちが抱える大西瓜
(手塚酔月抄出)

響焔2001年3月号掲載

くるしいときはゆっくり歩き吾亦紅
(和知喜八抄出)

響焔2001年4月号掲載

おじいさんおばあさん元気式部の実
(和知喜八抄出)
加賀ことば時々使い花野道
(伊関葉子抄出)

響焔2001年6月号掲載

ことばのない絵本をひらき冬銀河
(伊関葉子抄出)

響焔2001年7月号掲載

冬太陽こころ離れるものいくつ
(和知喜八抄出)
青空に吊るすジーパン雪景色
(長沼直子抄出)

響焔2001年8月号掲載

春遠くフランスパンとモーツァルト
(和知喜八抄出)
重いもの動かしており春渚
(山崎聰抄出)

響焔2001年9月号掲載

春の宵ほろ苦きものありがたく
(山崎聰抄出)

響焔2001年10月号掲載

澄んだ目の魚をおろす遅日かな (山崎聰、新川敏夫抄出)
母と子の想い出赤いチューリップ (和知喜八抄出)

響焔2001年11月号掲載

蚕豆とシャンペン夫のフランス語 (和知喜八抄出)
はらっぱの木馬に手綱夏めきぬ (山崎聰、新川敏夫抄出)

響焔2001年12月号掲載

たくさんの祈り十薬花明り (和知喜八、長沼直子抄出)
にんげんの影のでこぼこ螢狩 (新川敏夫抄出)

響焔2002年1月号掲載

ありのまま受入れ真夏蒼い富士 (相田勝子抄出)

響焔2002年3月号掲載

ひとり増え海の青さの初秋刀魚 (金子一与抄出)


白灯対談に取り上げられた句

響焔2001年1月号掲載

おにぎりの手塩ざらざら冬めきぬ



俳句界2001年2月号掲載

米田規子(響焔)
ラ・フランス


はつふゆやピリッと辛い豆を食べ
先生と落葉のような園児の輪
冬夕焼肩やわらかくピアノ弾く
降るように飯桐赤実宴の日
ちちの声聴く雪吊りの一本松
ことばのない絵本をひらき冬薔薇
ラ・フランス母の知らない子の世界


蟹解禁のニュースを聞いて、我が家は活気づき
期待感でいっぱいになる。「蟹送るよ。」と母から
電話が入り、今年の蟹のための大宴会が確実
になる。朱々と茹で上がった越前蟹が届くと、
私は俄か料理人として快い緊張を覚える。蟹を
さばきながら、母や弟のこと、亡き父のこと、厳しい
日本海の様子などが頭を駆け巡る。たくさんの
感謝の後、熱燗で乾杯!これぞ日本の冬!
しかし、私に「蟹」の句がほとんどないのはそうして
だろうか・・・。



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