米田規子 俳句集(2018年)
 

響焔2018年1月号掲載

光焔集

落葉掃く    米田 規子

ハロウィンの南瓜が笑い昼の黙
ひと匙ずつパフェの減りゆき流れ星
俄雨芋茎のレシピ切り抜いて
なにか楽し落葉掃く音風の音
太陽の隠れっぱなしピラカンサ
瞳がきれい運動会後の少年
富士山の全景視野にねこじゃらし


響焔2018年2月号掲載

光焔集

小春空    米田 規子

ポットから熱い珈琲初しぐれ
十一月はゆるやかなる上り坂
(山崎總、森村文子抄出)
くまさんの絵本を贈り小春空
待ち人の来るころ落葉の赤・黄色
光の中のスローモーション枯るるなり
制服の短いスカート花八ツ手
錦木紅葉この明るさのわたし


響焔2018年3月号掲載

光焔集

冬林檎    米田 規子

冬林檎あしたのために眠ります
危うい均衡ラ・フランスの微笑
(渡辺澄抄出)
東京を過ぎて三駅聖樹の灯
山眠る生きているから忙しい
青い鍋オレンジの鍋師走なり
走り続けて荒星の輝きに
(山崎總、石倉夏生抄出)
空港や真冬からだを熱くして


響焔2018年4月号掲載

光焔集

雪の音    米田 規子

雪霏々と誕生石のガーネット
お汁粉の甘さ控えめ阪神忌
寒波くる全力ダッシュ中学生
原風景遠くにありて雪の音
(山口彩子、川嶋悦子抄出)
日向ぼこややこしいこと後回し
雪だるま二つ寄り添い日暮どき
等身大のピアノと吾と寒月光


響焔2018年5月号掲載

光焔集

ヒヤシンス    米田 規子

徳利と御猪口が二つ風花す
(和田浩一抄出)
何を捨てよう窓際のヒアシンス
立春寒波海底に駅ひとつ
(森村文子抄出)
蒼穹や一気に剥いて光る葱
すこしずつまるくやさしく雨水なる
スカーフを蝶々結び三月来
おんな三人ぺんぺん草の花盛り


響焔2018年6月号掲載

光焔集

カンツォーネ    米田 規子

鎮魂歌ベルガモットにあまたの芽
野遊びのもうこの辺り終点か
雪国のふたり横浜名残雪
(山崎總抄出)
松の芯時がわたしを追い越して
(山口彩子抄出)
三月の雪のひと日をカンツォーネ
どこまでも未完燃えながら春入日
(森村文子抄出)
うららかや濃いめに淹れる加賀棒茶


響焔2018年7月号掲載

光焔集

筍    米田 規子

疲れ目にもっとも効いて柿若葉
存えて親しき空と花水木
どっと晩春もたもたと我が手足
曇天やぽつり金蘭ぽっと咲き
大東京地下街出口春疾風
おろおろと筍茹でて雨や風
(山崎總抄出)
大きな流れの真ん中躑躅燃ゆ
(川嶋悦子抄出)


響焔2018年8月号掲載

光焔集

夏来る    米田 規子

ゆるぎなきポプラ一本夏来る
(川嶋悦子抄出)
夏木立先頭パパの肩車
見えない明日緑陰に風の道
献立のネット検索夏つばめ
万緑や自律神経整えて
象の目の少し淋しく日の盛り
(山口彩子抄出)
入梅や南蛮漬の酢の加減

 

響焔2018年9月号掲載

光焔集

大南風    米田 規子

椨の暗がりの先夏の潮
晩節のあかるいところ大南風
(和田浩一、川嶋悦子抄出)
六月のいちにち長し象の皺
(山崎總抄出)
悔い一つのうぜんかずらあまた揺れ
炎天や港に黒き護衛艦
ハイビスカス恋人たちの海青し
吾に休息がらんどうの冷蔵庫

 

響焔2018年10月号掲載

光焔集

赤い月    米田 規子

七月来朝のひかりの鳩三羽
本ひらくカフェの片隅巴里祭
酸味よし真夏の熱きスープ良し
(石倉夏生抄出)
百日紅逢うときいつもまっさらで
月赤くアメリカ遠く大旱
かき氷大きな空と子らの声
本当のことを短く炎天下

 

響焔2018年11月号掲載

光焔集

土用入    米田 規子

「赤毛のアン」風吹き渡り青野原
イタリアの太陽と風ミニトマト
月涼し脛っかじりで大食いで
(石倉夏生抄出)
土用入おとこが磨く鍋・薬缶
クロード・モネの波息づいて晩夏光
この先のしるべなき道赤蜻蛉
ざらざらの梨の重さのいたみかな

 

響焔2018年12月号掲載

光焔集

栗ごはん    米田 規子

不意に秋ノート鉛筆ミルクティ
爽やかやパイプオルガン大音響
黒い目の秋刀魚焼く夜耿耿と
小さな靴砂場にひとつ虫時雨
(和田浩一抄出)
鬼皮渋皮それからの栗ご飯
雁渡しこのごろ太字ボールペン
花すすき弱火ことこと餡づくり

 

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