米田規子 俳句集(2010年)
 

響焔2010年1月号掲載

青焔集

茫茫 (横浜) 米田 規子

みちのくの連山蒼く木守柿
ざわざわと鳥居をくぐり一位の実
どんぐりを拾い茫茫たる往時
(山崎聰、奈良岡晶子抄出)
昨日今日関東平野わらぼっち
ポケットの鍵消え背高泡立草


響焔2010年2月号掲載

青焔集

わさわさと (横浜) 米田 規子

ひとつ終えさらにもひとつ十一月
(半澤つや子抄出)
ざわざわと葉付き大根良き日かな
黄昏のセンチメンタル冬帽子 (奈良岡晶子抄出)
音楽に包まれ林檎紅くなる
胸元に真珠のひかり枯野原


響焔2010年3月号掲載

青焔集

大きな袋 (横浜) 米田 規子

風のようにナース行き交い冬景色
持ち替えて大きな袋日短か
屋根の下ひと寄り添いて年の暮
数え日や道のまん中まるい猫
まばたきを大きくひとつ冬紅葉
(奈良岡晶子抄出)


響焔2010年4月号掲載

青焔集

阪神忌 (横浜) 米田 規子

花アロエ日蔭日向に島の猫
裸木の向こうすとんと蒼い宇宙
阪神忌香り仄かにシクラメン
(高際君子抄出)
冬逝きぬ大海原のかがやきに
いろいろな猫に出会って春隣 (渡辺澄抄出)


響焔2010年5月号掲載

青焔集

寒い春 (横浜) 米田 規子

赤い酒とろりと甘く枯木星
(山崎聰抄出)
自問いくたび裸木に突き当る (高際君子抄出)
根菜をやわらかく煮て寒い春
春の雨黒い瞳のココ・シャネル (渡辺澄抄出)
二人減り三人増えて春の森


響焔2010年6月号掲載

青焔集

花すみれ (横浜) 米田 規子

正面にぽっかりと雲島の春
エスプレッソの小さなカップ春時雨
放念や風さわぐ日の花すみれ
(高際君子抄出)
エッセンシャルオイル春の日の小部屋
熊本の大きなデコポン団欒後


響焔2010年7月号掲載

青焔集

八重桜 (横浜) 米田 規子

船の水脈あわあわ消える遅日かな
もう少し色加えたき桜冷
(渡辺澄抄出)
装いの最後に帽子チューリップ
しあわせを零さぬように八重桜
水きれいひっそりとして新樹径


響焔2010年8月号掲載

青焔集

みずいろ (横浜) 米田 規子

ふかぶかとおじぎ返され柿若葉
初夏やオムレツふわりと焼き上がる
翳ひとつ大きく深く五月尽
青い車に雨降りしきり夏木立
自転車も少女もみずいろ夏来る
(高際君子抄出)


響焔2010年9月号掲載

青焔集

ゆるやかに (横浜) 米田 規子

しなやかなこころと身体麦の秋
さらさらと二人の月日青ポプラ
梅雨寒やまんまるふたつ子生石
紫陽花大玉ゆるやかに人といて
恋いつも微熱のように栗の花
(山崎聰, 高際君子抄出)


響焔2010年10月号掲載

青焔集

百日紅 (横浜) 米田 規子

ショパンに酔いぬ洗い髪乾くまで
(北登猛抄出)
森閑とまひるの昏さ百日紅 (河村四響, 高井太郎抄出)
口中に大きな梅干朝ぐもり (田中賢治抄出)
ぽつねんと橋の真ん中日の盛り
瞑想のあとの半眼大暑かな


響焔2010年11月号掲載

青焔集

盛夏 (横浜) 米田 規子

ゆるぎなき背骨一本盛夏なり
(高井太郎, 田中賢治抄出)
揺れながらある日どん底百日紅
はらからとひとつの空の下の梨
淋しくないかと晩夏のジャズピアノ
ランチ愉し青毬栗の太りいる


響焔2010年12月号掲載

青焔集

栗御飯 (横浜) 米田 規子

アメリカに話が飛んで栗御飯
一杯の熱い珈琲いわし雲
(高井太郎抄出)
秋うららメトロノームに追い付けず
フライパン大きく返し秋の晴
ジンジャーの花歌うこと笑うこと (田中賢治抄出)


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