米田規子 俳句集(2008年)
 

響焔2008年1月号掲載

青焔集

よこはま秋 (横浜) 米田 規子

湘南やローズマリーの花に蝶
たくさんの笑顔に会いぬうろこ雲
風音のやがて水音薄紅葉
(高井太郎抄出)
よこはま秋白いカップと白い皿
(向井正信抄出)
きらきらと豆柿朱く旅の終わり


響焔2008年2月号掲載

青焔集

ぽっかりと (横浜) 米田 規子

秋時雨小さな画廊にまるい窓
枇杷の花少し離れて歩き出す
夕日ほんのりパン買って落葉道
ぽっかりと大きく深く冬の晴
青と白のイルミネーション冬帽子


響焔2008年3月号掲載

青焔集

あらあらと (横浜) 米田 規子

日溜りに犬まるくなる花アロエ
ワイン注ぎ静かな夜のシクラメン
あらあらと会話枯野をころがって
ポタージュにパセリの緑ふゆ日和
柚子味噌の香りの仄かははの声
(高井太郎抄出)


響焔2008年4月号掲載

青焔集

真冬 (横浜) 米田 規子

余白なき一日冬の鵙猛る
少しずつ違う三人冬薔薇
(小林一子抄出)
中年や長い地下道出て真冬
(山崎聰、北迫正男抄出)
冬の苺芯まで甘く雨の音
覚めてより砂糖のような春の雪


響焔2008年5月号掲載

青焔集

春少し (横浜) 米田 規子

春の山動く歩道に運ばれて
クロッカスひらいて閉じて猫薄目
夕暮の富士のももいろ春少し
如月やガラスのような幸ありぬ
半眼のヨガの瞑想山笑う


響焔2008年6月号掲載

青焔集

風 (横浜) 米田 規子

ひとところ風止んでおり番蝶
(北迫正男抄出)
玉子焼きふっくら甘く彼岸寒
沈黙の明日へふくらむフリージア
犬くるくるボールころころ芽吹山
思い出の色濃いところ花の雨


響焔2008年7月号掲載

青焔集

夏めきて (横浜) 米田 規子

ピアノ弾き木香薔薇の花明り
嘶きや新樹の森に日が射して
胸の中ざわざわ暮れて花卯木
夏めきて水平線のその向こう
(北迫正男抄出)
待っており雨に揺らいで若楓


響焔2008年8月号掲載

青焔集

じゃがいもの花 (横浜) 米田 規子

風景に金の額縁夏はじめ
(北迫正男抄出)
ややためらいて桜んぼ口の中
迷路なりベーゲンビリアに風少し
じゃがいもの花咲き猫の怪我治る
(北登猛抄出)
少し病みアスパラガスの穂先が好き


響焔2008年9月号掲載

青焔集

青鬼灯 (横浜) 米田 規子

夏木立貝殻光るイヤリング
スパイスの香りと水と夏燕
(小林一子抄出)
あたたかい拍手で終り夏の雨
青鬼灯あおくぽかんとひとりなり
(北迫正男抄出)
六月みずいろ絵画の中の私


響焔2008年10月号掲載

青焔集

夏野 (横浜) 米田 規子

おずおずと鋸使い旱梅雨
成長のある日突然夏野かな
(山崎聰、内田秀子抄出)
大の字に男が眠る晩夏光
休日の静寂深しカサブランカ
雲の峰水分け合いて若さあり


響焔2008年11月号掲載

青焔集

フルーツサラダ (横浜) 米田 規子

面影を辿ってゆけば暑い夏
(山崎聰抄出)
星のようにフルーツサラダ夏休
(秋山石声子抄出)
愉快なり皿に秋刀魚の骨一本
(内田秀子抄出)
大雨警報ときどきは虫の声
雲に乗るまでエスカレーター残暑


響焔2008年12月号掲載

青焔集

猫の尻尾 (横浜) 米田 規子

新涼のひくりと猫の尻尾かな
(内田秀子抄出)
精一杯今をかがやき黒葡萄
法師蝉母との時間たまわりぬ
(秋山石声子抄出)
たわいなき会話弾めり茸飯
するするとファイバースコープ曼珠沙華


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