米田規子 俳句集(2007年)
 

響焔2007年1月号掲載

青焔集

秋日和 (横浜) 米田 規子

天高し飴ころころと口の中
秋日和サラダに豆の赤や白
(伊藤君江・森村文子抄出)
黄落期むかしも今もショパン好き
行く末のほのぼの灯りシクラメン
猫の秋パタパタ尻尾右左


響焔2007年2月号掲載

青焔集

桜紅葉 (横浜) 米田 規子

新聞紙きちんと束ね鵙の天
追いかけて追いかけられて桜紅葉
上野の森にアコーディオン弾き初時雨
鍋の中に蕪透きとおる昼の雨
ウィスキーボンボン冬の夜の二人
(伊藤君江抄出)


響焔2007年3月号掲載

青焔集

その先 (横浜) 米田 規子

雨の日のポインセチアと長い手紙
(伊藤君江・森村文子抄出)
ミルクティに生姜少々冬きらい
看護婦のからから笑う実南天
その先のもやもや餅が膨らんで
大いなる矛盾を抱え花八ツ手


響焔2007年4月号掲載

青焔集

公魚 (横浜) 米田 規子

裸木に雨粒ひかるニュータウン
(長沼直子抄出)
小雪舞い女子高生の紺の服
顔揃い凍てて公魚五十匹
アイソトープ検査凍蝶すこし動く
春めいて関帝廟に金の獅子


響焔2007年5月号掲載

青焔集

チョコレート (横浜) 米田 規子

春寒く宝石のようなチョコレート
はにかんで笑くぼがふたつ春の風
竜天に登り泡立つカプチーノ
少年の口とんがって春二番
山笑う定位置におく鍋・薬缶
(高際君子抄出)


響焔2007年6月号掲載

青焔集

花疲れ (横浜) 米田 規子

おぼろ月少し酸っぱいシャーベット
はこべらのみどりやわらか猫帰宅
朝桜自転車で風切っている
永き日の遊覧船に乳母車
チョコレートと軽い音楽花疲れ
(高際君子抄出)


響焔2007年7月号掲載

青焔集

春帽子 (横浜) 米田 規子

集まって今日いちにちを飛花落花
真剣に遊んでおりぬ春帽子
(山崎主宰抄出)
春の人参きれいに洗いうつ気分
ゴールデンウィークぽっかりと穴があき
若さ眩しくラベンダーわっと咲く


響焔2007年8月号掲載

青焔集

冷奴 (横浜) 米田 規子

風五月ポタージュスープうすみどり
三人のちから関係冷奴
(山崎主宰、高際君子抄出)
蚕豆のみどりあわあわ婚記念
(長沼直子抄出)
青葉若葉小さなカフェの赤い屋根
六月やユーモレスクとまるい月


響焔2007年9月号掲載

青焔集

パンの香り (横浜) 米田 規子

再会や窓辺の赤いゼラニウム
(高際君子抄出)
何のために走り続ける夏木立
日曜のいろいろな音額の花
焼き上がるパンの香りと玉の汗
(長沼直子抄出)
よるの雨鯵の尾鰭に化粧塩
(山崎主宰抄出)


響焔2007年10月号掲載

青焔集

全山みどり (横浜) 米田 規子

全身にまつわる空気の凌霄花
竹林の大いなる闇蟻の列
鎌倉の全山みどりいま自由
(高井太郎抄出)
竹皮を脱ぎ男の子女の子
茄子の花猫にも日課あるらしく
(向井正信抄出)


響焔2007年11月号掲載

青焔集

盛夏 (横浜) 米田 規子

盛夏なり骨格筋率やや低く
崩してはまた積み上げる八月や
炎天くらく遠景のちちとはは
朝曇り小さく握る塩むすび
胸中にふるさと重く花木槿


響焔2007年12月号掲載

青焔集

ラ・フランス (横浜) 米田 規子

むらさきに白を重ねる秋初め
一日のはじめゆっくりラ・フランス
(高井太郎抄出)
検索の先のその先虫の闇
おとなりと我が家の月日花茗荷
(向井正信抄出)
控え目に少年笑う秋しぐれ


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