米田規子 俳句集(2006年)
 

響焔2006年1月号掲載

白焔集

桜紅葉 (横浜) 米田 規子

秋の雲コーヒーショップ透けている
いちにちを歩いて自由芒原
止めようのなき流れ桜紅葉かな
持て余す雨傘一本ねこじゃらし
波音のほか雲ばかり鶏頭花


響焔2006年2月号掲載

白焔集

冬初め (横浜) 米田 規子

少年のシャンプー香り冬初め
(相田勝子抄出)
それぞれの貌とり戻し十一月
牛の尻尾並んで揺れて日短か
堂々として裏庭の花八ツ手
辿り着き銀杏黄葉に日が燦々


響焔2006年3月号掲載

白焔集

うちの猫 (横浜) 米田 規子

からまって落葉と風とうちの猫
(金子一与抄出)
やわらかき医師の目差し冬旱
冬銀河ひとりのココア熱くして
アップルパイの匂いの中の聖誕祭
冬の靄群青色の低いポスト


響焔2006年4月号掲載

白焔集

ポタージュ (横浜) 米田 規子

メール来るみずうみ凍る遠い国
(松田起子抄出)
ほの甘いにんじんポタージュ少し鬱
ほそぼそと伏目がちにて雪解風
こころ遠くにオリーブ色の春セーター (石井和子抄出)
立春寒波電車が地下にすべり込む


響焔2006年5月号掲載

白焔集

山笑う (横浜) 米田 規子

ひとまわり大きい自転車山笑う
風光る華奢な鎖のネックレス
きさらぎや右脳左脳にモーツァルト
黒猫とねんごろになり風邪三日
如月のシャンペンの泡しあわせか


響焔2006年6月号掲載

白焔集

クロッカス (横浜) 米田 規子

白梅の泡立つように風無き日
伸びて伸びてすとんと落ちる春の夢
(山崎主宰抄出)
春三日月パリの香りのチョコレート
だんだん元気クロッカスの濃い黄色
ワイングラス軽くふれ合い桜東風


響焔2006年7月号掲載

白焔集

行く春 (横浜) 米田 規子

父の声天から降ってつくしんぼ
ゆるやかな時間タンポポ眩しかり
(松田起子抄出)
キャッチボールの音が途切れて花の冷
あったかいおにぎりふたつ八重桜 (石井和子抄出)
行く春のあかるい雨と濃いコーヒー


響焔2006年8月号掲載

白焔集

薔薇 (横浜) 米田 規子

蕗の葉のほろほろ苦し五連休
鯵フライ定食五月のさむい雨
赤い傘消えそれからの若葉寒
(北登猛抄出)
ふっくらと薔薇のももいろ人を恋う
孤独ともうすむらさきの薔薇香る


響焔2006年9月号掲載

白焔集

梅雨兆す (横浜) 米田 規子

街薄暑たっぷりなめこおろし蕎麦
吊るされて鍋のいろいろ梅雨兆す
(石井和子抄出)
香り良き珈琲六月はじまりぬ
新じゃがをごろごろ洗う朝の風
クレヨンで大きな笑顔梅雨さなか (松田起子抄出)


響焔2006年10月号掲載

白焔集

蓮の花 (横浜) 米田 規子

猫ながく机の上に梅雨の月
体内を風吹き抜ける蓮の花
(手塚酔月抄出)
きらきらと汗の少女のアラベスク (相田勝子抄出)
木下闇めがねの奥のやさしい目
ジャズ軽やかに日盛りの喫茶店


響焔2006年11月号掲載

白焔集

亀の首 (横浜) 米田 規子

ポテトチップの軽い塩味夏休み
みなとみらい夏の少女の青い爪
橋の上もっとも涼し亀の首
(手塚酔月抄出)
遠くでテロ白桃匂う夜の卓 (相田勝子抄出)
少年の細長い指晩夏光


響焔2006年12月号掲載

白焔集

通過点 (横浜) 米田 規子

新しいGパンの紺秋澄めり
(相田勝子抄出)
一病を忘れていたり黒葡萄
定年は通過点にて秋刀魚の背
こんがらがって悩みの根っこ烏瓜
鈍痛やじいんじいんと虫が鳴き


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