米田規子 俳句集(2004年)

響焔2004年1月号掲載

白焔集

ななかまど (横浜) 米田 規子

かまくらの山のふところ実紫
葛の花闇から一歩抜け出して
集まって笑って真っ赤ななかまど
(半澤つや子抄出)
曼珠沙華なにやかや押し寄せて来る
ひだまりに顔洗う猫柿熟れる


響焔2004年2月号掲載

白焔集

ミント飴 (横浜) 米田 規子

いろいろな野菜のスープ冬隣
(半澤つや子、大野忠孜抄出)
自由なり風といっしょに落葉道
カンカンカンと踏切鳴って冬茜
きりきりと冬ミント飴青く透け
異分子は異分子として冬木立


響焔2004年3月号掲載

白焔集

実南天 (横浜) 米田 規子

長毛種白猫窓に実南天
なんとなくひと部屋に寄り冬林檎
飽食やテレビが笑う冬の夜
街路樹の落葉が吹かれエスカルゴ
戦さのことも風呂吹大根すき透る


響焔2004年4月号掲載

白焔集

寒椿 (横浜) 米田 規子

青空にふくらむ冬芽小学校
牛小屋の灯のあかあかと年の暮
(磯辺すみ子抄出)
甘栗の匂い一月晴れ渡り
尼寺に屈みて入り寒椿 (和田璋子抄出)
坂道を並んで歩き冬木の芽


響焔2004年5月号掲載

白焔集

はなびらひらひら (横浜) 米田 規子

春一番にんじんサラダ・干ぶどう
絵画から力をもらい春の大地
パンジーの花びらひらひら猫に髭
透明な入口出口春の森
真っ白な雲と春風みなとみらい


響焔2004年6月号掲載

白焔集

ポルカ (横浜) 米田 規子

はればれと胃のなきことを黄水仙
だんだんとうれしくなってつくしんぼ
三月やなにをどこからほぐそうか
(和田璋子、磯辺すみ子抄出)
大きく曲ってポルカと春の雲
崩してはまた積み上げる桜どき


響焔2004年7月号掲載

白焔集

予定表 (横浜) 米田 規子

遠景を人すすみゆき花菜畑
足並が揃い桜のさくら色
くるりくるり春のパラソル逗子葉山
散るさくら一年間の予定表
年寄りの猫いる暮し八重桜
(和田璋子抄出)


響焔2004年8月号掲載

白焔集

葛根湯 (横浜) 米田 規子

お腹から笑いアスパラガスの花
燃えながら大きな入日春逝きぬ
ゴールデンウィークさなか葛根湯
ばっさりと髪を切ろうか今年竹
ほがらかな詩人四五人若葉寒


響焔2004年9月号掲載

白焔集

突破口 (横浜) 米田 規子

六月の風焼きたてのメロンパン
ぽおっと微熱芥子の花五六本
蛇いちご熟れ突破口見つからぬ
洗い髪うすむらさきの日暮来て
コーヒーの香りが満ちて濃紫陽花


響焔2004年10月号掲載

白焔集

人と猫 (横浜) 米田 規子

朝粥にうすい塩味旱雲
列島炎暑青りんご一個買う
日盛りの家は昏くて人と猫
炎昼や画廊真四角真っ白で
初雪草たのしきことのあれやこれや


響焔2004年11月号掲載

白焔集

未完の絵 (横浜) 米田 規子

真夏空まっすぐ大きく伸びる木よ
ピリピリと生姜煎餅盛夏なり
怒り湧きひまわり夜の貌で立つ
整然と未完の絵あり晩夏光
天上天下唯我独尊猫の夏


響焔2004年12月号掲載

白焔集

秋桜 (横浜) 米田 規子

蒲の穂に風集まりて五十代
(長沼直子抄出)
思い切ってなにもしない日鰯雲
おいでおいでと風の囁き秋桜
小鳥来るパステルピンクのスニーカー
天高しタウンページに目・鼻・口


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